「今の仕事をこのまま続けていいのか」——30代・40代でこの問いに直面したとき、セカンドキャリアとして税理士を選ぶ人が増えています。筆者自身、政府系金融機関でのキャリアに区切りをつけ、税理士の道を選びました。あのときの決断が人生を180度変えたのは間違いありません。
この記事では、「税理士をセカンドキャリアとして選ぶのは現実的なのか」を、実体験をもとに正直にお話しします。
なぜセカンドキャリアに「税理士」が選ばれるのか
独占業務がある安心感
税理士の最大の強みは独占業務があることです。税務代理、税務書類の作成、税務相談——これらは税理士にしか許されていない業務です。つまり、資格さえあれば「食えなくなることはない」。他のキャリアチェンジにはない安心感があります。
年齢制限がない
税理士試験に受験資格の年齢制限はありません。30代はもちろん、40代、50代からでも挑戦できます。合格後も定年がないため、70代、80代でも現役で働けます。セカンドキャリアとしてこれほど適した資格は少ないでしょう。
前職の経験が武器になる
税理士は「税務の知識」だけで勝負する仕事ではありません。クライアントの事業を理解し、経営者と対話する力が必要です。前職での業界知識や社会人としての経験が、そのまま差別化要素になります。
年代別の現実と戦略
年代 | 現実 | 推奨戦略 | 合格後の年収目安 |
|---|---|---|---|
30代前半 | 最も有利。体力・時間・転職市場すべてが味方 | 2〜3科目合格の段階で転職し、実務経験を積みながら残りを取得 | 500〜800万円 |
30代後半 | 十分可能。ただし時間との戦い | 科目合格を最優先。前職と親和性のある分野(資産税、国際税務等)を狙う | 450〜700万円 |
40代前半 | 可能だが覚悟が必要 | 前職の経験を活かせる特定分野に絞り込む。3科目以上合格してから転職 | 400〜600万円 |
40代後半〜 | ハードルは高いが道はある | 独立前提でスキルを蓄積。中小事務所で実務経験を得る | 350〜550万円 |
筆者のセカンドキャリア体験
政府系金融機関から税理士業界へ
筆者は政府系金融機関に勤めていましたが、「組織の看板に頼るのではなく、自分自身の専門性で勝負したい」という思いから税理士を目指すことにしました。年収は350万円。安定はしていたが、成長の天井が見えていた。
簿記論、財務諸表論、法人税法と受験し、科目合格を重ねながら準大手税理士法人に転職。年収は500万円に上がりました。そこから大手コンサルティングファームに転職して700万円、さらに上場企業に移って800万円と、キャリアを重ねるごとに年収が上がっていきました。
つまり、350万円→800万円。セカンドキャリアとして税理士を選んだことで、年収は2倍以上になったのです。
セカンドキャリア組が直面する3つの壁
壁1:勉強時間の確保
税理士試験の合格には、1科目あたり600〜1,000時間の勉強が必要と言われています。働きながらこの時間を捻出するのは、正直かなり厳しい。
筆者の場合、平日は帰宅後に2〜3時間、土日は5〜8時間を勉強に充てていました。飲み会はほぼ断り、趣味の時間もゼロにしました。2〜3年はこの生活が続く覚悟が必要です。
壁2:年収ダウンの可能性
前職の年収が高い場合、転職直後は年収が下がるケースがあります。特に未経験で会計事務所に入る場合、最初の年収は300〜400万円程度からスタートすることも。これを「投資期間」と割り切れるかどうかが分かれ目です。
壁3:プライドの葛藤
前職でそれなりのポジションにいた人ほど、会計事務所で一番下からスタートすることに抵抗を感じます。筆者も最初は「新人扱い」に慣れるのに時間がかかりました。ただ、ここで変なプライドを出すと成長が止まります。学ぶ姿勢を忘れた人は、どんな業界でも伸びません。
セカンドキャリア組の成功パターン
パターン1:前職の強みを税務と掛け算する
金融機関出身なら資金調達・M&A税務、不動産業界出身なら資産税、IT業界出身ならDX・クラウド会計。前職の経験を税務と掛け合わせることで、「ただの税理士」ではない独自のポジションを築けます。
パターン2:科目合格を武器に早めに転職する
5科目全て受かってから転職するのではなく、1〜2科目合格の段階で会計事務所に転職し、実務経験を積みながら残りの科目を取得するのが効率的です。筆者もこのルートで進みました。
パターン3:将来の独立を見据えた事務所選び
最終的に独立を考えているなら、顧客対応の経験が積める中小事務所を選ぶのも戦略です。大手法人は年収は高いものの、独立に必要な「顧客を自分で回す」経験が積みにくい場合があります。
セカンドキャリアとして税理士を選ぶべき人
- 「自分の専門性で食べていける力が欲しい」と思っている人
- 長期的にキャリアを積み上げていく覚悟がある人
- 前職の経験を「捨てる」のではなく「活かす」発想がある人
- 2〜3年の「投資期間」を受け入れられる人
税理士は人生を変える劇薬です。筆者はそう断言します。ただし効果が出るまでには時間がかかる。すぐに結果が出る薬ではありません。それでも、「自分の力で生きていける」という感覚を手に入れたい人には、最高のセカンドキャリアです。
まずは税理士試験の情報を集め、1科目でも受験してみてください。合格したとき、きっと「自分にもできる」という確信が持てるはずです。
