筆者は20代後半まで政府系金融機関に勤めていました。周囲からは「安定しているのにもったいない」と何度も言われましたが、最終的にその環境を飛び出して準大手税理士法人に転職しました。結果として年収は350万円から500万円へ、150万円のアップ。でも正直に言うと、お金以上に大きかったのは「自分の専門性で勝負できる」という実感でした。
この記事では、なぜ安定した金融機関を辞めたのか、どうやって転職を実現したのか、そしてその後のリアルを包み隠さずお伝えします。
政府系金融機関での日々——「看板」で仕事をする違和感
筆者が最初に就職したのは政府系金融機関でした。具体的には信用保証業務に携わっていたのですが、仕事内容自体は決して嫌いではありませんでした。融資先の財務諸表を読み解き、保証の可否を判断する。数字に触れる仕事は性に合っていたと思います。
ただ、年数が経つにつれて「自分はこの組織の看板がなくなったら何ができるのか」という疑問がどんどん大きくなっていきました。
取引先が丁寧に対応してくれるのは、筆者個人の実力ではなく「政府系金融機関の職員」という肩書きがあるから。異動のたびにゼロからやり直しで、専門性が積み上がっている感覚もない。正直に言うと、「組織の看板に頼るのではなく、自分自身の専門性で勝負したい」という思いが日に日に強くなっていきました。
閉鎖的な社風と将来への焦り
政府系金融機関の社風は、良く言えば堅実、悪く言えば閉鎖的でした。前例踏襲が基本で、新しいことを提案しても「前はこうだったから」で終わる。年功序列の評価体系で、どれだけ成果を出しても昇給のペースはほぼ横一線。
20代のうちは「そういうものだ」と思っていましたが、30歳が近づくにつれて焦りが出てきました。このまま10年、20年とここにいて、自分は何者になれるんだろう、と。
同期の中には「安定しているから」と現状に満足している人も多かったですが、筆者にはそれが逆に恐怖でした。安定の代わりに、成長の可能性を手放しているように感じたのです。
税理士を目指すことを決意した理由
税理士を選んだのは、金融機関時代に税務の重要性を肌で感じていたからです。融資審査で企業の決算書を見るたびに、「この会社の税務はどうなっているんだろう」「節税のアドバイスまでできたらもっと価値を出せるのに」と思っていました。
加えて、税理士は独占業務がある。つまり、資格さえあれば組織に依存せず「自分の名前」で仕事ができる。政府系金融機関で感じていた「看板頼り」の対極にある働き方が実現できると思いました。
働きながら2科目合格するまで
勉強を始めたのは27歳の頃です。最初に手をつけたのは簿記論と財務諸表論。金融機関での業務と並行しての勉強は正直かなりきつかったです。
平日は帰宅後に2〜3時間、休日は朝から夕方まで勉強。繁忙期には勉強時間がゼロの日もありました。1年目は簿記論だけ合格、2年目に財務諸表論に合格。この2科目合格が転職の切符になりました。
正直、何度も「もう無理かも」と思いました。特に1年目の試験前は、仕事のストレスと試験のプレッシャーで精神的にかなり追い込まれていました。でも、「ここで諦めたら一生この場所にいることになる」という危機感が、なんとか筆者を踏みとどまらせてくれました。
転職活動の実際——特化型エージェントとの出会い
2科目に合格した段階で転職活動を始めました。最初は大手の総合型エージェントに登録したのですが、ここでの経験はあまり良いものではありませんでした。
「簿記論の科目合格ですか...」と、明らかに税理士試験の科目合格の価値を分かっていない対応。紹介される求人も、筆者の方向性とは合わないものばかり。正直、がっかりしました。
その後、会計業界に特化した転職エージェントに切り替えたところ、対応が全く違いました。科目合格の段階でどんなポジションが狙えるか、どの法人が教育体制に力を入れているか、具体的かつ的確なアドバイスをもらえました。
結果として、準大手税理士法人から内定をもらうことができました。年収は350万円から500万円へ。2科目合格で転職しただけで150万円のアップです。この事実は、今でも「科目合格には市場価値がある」という筆者の確信の原点になっています。
税理士法人に転職して変わったこと
「自分の力で稼いでいる」という実感
税理士法人に入って最も大きく変わったのは、自分の専門性がダイレクトに仕事の成果に結びつく実感です。金融機関時代は「組織の一員として」の仕事でしたが、税理士法人では「自分が調べて、自分が判断して、自分がクライアントに説明する」という一連の流れが求められます。
最初は不安でした。法人税の申告書を一人で作るなんて、本当にできるのかと。でも、先輩から「分からなかったら自分で条文を引け。調べて分からなかったら聞け」と言われ、必死に食らいつきました。このプロセスが、後にコンサルや事業会社で通用する「自走力」を鍛えてくれたと今では感じています。
もちろん楽なことばかりではない
転職後、すべてが順調だったかと言うと、そんなことはありません。税理士法人の繁忙期は想像以上でした。確定申告シーズンや3月決算法人の申告期限が重なる4〜5月は、終電帰りが当たり前。先輩の話によると、少し前までは事務所で寝泊まりするような「お祭り状態」だったそうです。
また、金融機関時代と違い、税理士法人には「組織が守ってくれる」感覚が薄いです。自分のミスは自分のミス。クライアントへの説明も自分でやる。この責任の重さに最初は戸惑いました。
でも、その分だけ成長のスピードは圧倒的に速かった。半年も経つと、金融機関にいた数年間よりも濃い経験を積んでいると実感できるようになりました。
転職前の自分に言いたいこと
転職前の不安 | 実際どうだったか |
|---|---|
2科目合格で転職できるのか | 特化型エージェントを使えば十分可能。年収もアップした |
安定を手放すのが怖い | 専門性がある方がよほど安定する。組織の看板は自分のものではない |
年齢的に遅いのでは | 20代後半はむしろ社会人経験がプラスに評価される |
税理士法人は激務では | 繁忙期は確かにきついが、閉塞感のある日々より遥かに充実している |
政府系金融機関時代の筆者は、「安定」という言葉に縛られていました。でも振り返ると、あの環境にいた時間は「安定」ではなく「停滞」でした。
同じ状況にいる方へ
もし今、金融機関や安定した組織にいて「このままでいいのか」と悩んでいるなら、まずは科目合格を目指してみてください。簿記論と財務諸表論の2科目でいい。それだけで転職市場での見え方が劇的に変わります。
筆者は税理士資格のおかげで年収が350万円から、最終的には800万円まで上がりました。でも、お金以上に大きいのは「自分の専門性で勝負できる」という自信です。組織の看板ではなく、自分の名前で仕事ができる。この感覚は、一度味わうともう元には戻れません。
税理士は人生を変える力がある資格です。迷っているなら、動いてみてください。
