転職先を選ぶとき、年収ばかりに目が行っていませんか? 実は福利厚生の違いが年間50〜100万円以上の「見えない年収差」を生むことがあります。
筆者は政府系金融機関・準大手税理士法人・大手コンサル・上場企業と4社を経験してきましたが、福利厚生のレベルは驚くほど異なりました。この記事では、会計事務所の福利厚生を項目別に比較し、転職時に確認すべきポイントを整理します。
法人タイプ別・福利厚生の総合ランキング
順位 | 法人タイプ | 総合評価 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|---|
1位 | 上場企業 | S | 全項目が高水準 | 税理士特有の支援は少ない |
2位 | Big4税理士法人 | A | 研修制度・DC | 有給消化率にばらつき |
3位 | 準大手税理士法人 | B+ | 資格取得支援 | 法人による差が大きい |
4位 | 中堅事務所 | B | 柔軟な働き方(事務所次第) | 制度が未整備なケースあり |
5位 | 個人事務所 | C | 所長次第で柔軟 | 制度がほぼない場合も |
筆者の実感として、上場企業の福利厚生は税理士法人を圧倒しています。年収は税理士法人の方が高いケースもありますが、福利厚生まで含めた「総報酬」では上場企業が有利になることが多いです。
項目別の福利厚生比較
1. 研修制度
法人タイプ | 研修充実度 | 内容 | 費用負担 |
|---|---|---|---|
Big4 | 充実 | 社内研修・海外研修・e-learning | 全額会社負担 |
準大手 | やや充実 | 社内研修・外部セミナー | 全額〜一部負担 |
中堅 | 普通 | OJT中心・外部セミナー | 事務所次第 |
個人事務所 | 少ない | 所長からのOJT | 自己負担が多い |
上場企業 | 充実 | 社内研修・資格取得支援 | 全額会社負担 |
Big4の研修制度は業界トップクラスです。入社時の基礎研修に加えて、各職位への昇進時にリーダーシップ研修やプロジェクトマネジメント研修が用意されています。若手のうちにBig4で研修を受けておく価値は大きいと感じます。
2. 資格取得支援
法人タイプ | 試験休暇 | 予備校費用補助 | 合格祝金 |
|---|---|---|---|
Big4 | 5〜10日 | なし〜一部補助 | あり(10〜30万円) |
準大手 | 5〜14日 | 全額〜半額補助 | あり(5〜20万円) |
中堅 | 3〜7日 | なし〜一部補助 | あり(3〜10万円) |
個人事務所 | 0〜5日 | なし | なし〜あり |
科目合格を目指しながら働くなら、試験休暇の日数と予備校費用補助は必ず確認しましょう。準大手の中には試験前2週間の休暇と予備校費用の全額補助を打ち出している法人もあり、年間で30〜50万円相当の価値があります。
3. 有給休暇の取得率
法人タイプ | 有給付与日数 | 実際の取得率 | 取得しやすさ |
|---|---|---|---|
Big4 | 20日 | 50〜70% | 繁忙期は取りにくい |
準大手 | 15〜20日 | 40〜60% | 部門・上司による |
中堅 | 10〜15日 | 30〜50% | 事務所の雰囲気次第 |
個人事務所 | 10日 | 20〜40% | 取りにくいケースが多い |
上場企業 | 20日 | 60〜80% | 取得推奨の風土 |
上場企業の有給取得率の高さは顕著です。筆者自身、上場企業に移ってから有給取得率は大幅に上がりました。有給1日あたり約3万円(年収800万円ベース)の価値があると考えると、取得率の差は無視できません。
4. リモートワーク・フレックス制度
法人タイプ | リモート導入率 | フレックス | 時短勤務 |
|---|---|---|---|
Big4 | 高い | あり | あり |
準大手 | 中程度 | 法人による | あり(取得実績は少ない) |
中堅 | 低い | 少ない | 事務所次第 |
個人事務所 | 低い | ほぼなし | 所長次第 |
上場企業 | 高い | あり | あり(実績豊富) |
5. 住宅手当・通勤手当
法人タイプ | 住宅手当 | 通勤手当 |
|---|---|---|
Big4 | なし〜月2万円 | 全額支給 |
準大手 | なし〜月1.5万円 | 全額支給 |
中堅 | なし | 上限あり(月2〜3万円) |
個人事務所 | なし | 上限あり(月1〜2万円) |
上場企業 | 月1〜5万円 | 全額支給 |
住宅手当は月3万円でも年間36万円。地味に見えますが、10年で360万円の差になります。
福利厚生の「見えない年収」を計算してみる
項目 | 個人事務所 | 準大手 | 上場企業 |
|---|---|---|---|
額面年収 | 500万円 | 650万円 | 700万円 |
退職金拠出(年間) | 6万円 | 18万円 | 48万円 |
住宅手当(年間) | 0円 | 12万円 | 36万円 |
資格取得支援 | 0円 | 30万円 | — |
有給取得差額 | — | +15万円 | +30万円 |
研修費用 | 自費10万円 | 会社負担20万円 | 会社負担30万円 |
実質年収(概算) | 496万円 | 745万円 | 844万円 |
福利厚生を金銭換算すると、額面年収の差以上に実質年収の差が広がります。個人事務所と上場企業の差は額面で200万円ですが、実質では約350万円にまで広がるのです。
転職時に福利厚生を確認する方法
- 求人票の「福利厚生」欄を隅々まで読む——「社保完備」しか書いていない求人は要注意
- 面接で具体的に質問する——「有給の取得率はどのくらいですか」「リモートワークは週何日可能ですか」
- 転職エージェントに内部情報を聞く——制度の有無だけでなく「実際に使われているか」が重要
- 口コミサイトを参考にする——ただし極端な意見は割り引いて読む
まとめ:年収と福利厚生の「総報酬」で転職先を選ぼう
筆者が4社を経験して最も実感したのは、年収だけで転職先を選ぶと後悔するということです。年収50万円高くても福利厚生が貧弱な法人よりも、年収は同じでも退職金・住宅手当・研修制度が充実した法人の方が、長期的に見れば圧倒的に得をします。
転職を考える際は、年収と福利厚生を合算した「総報酬」で比較してください。とくに退職金・住宅手当・資格取得支援の3つは金額換算しやすいので、必ず確認することをおすすめします。
