Big4税理士法人の中でも、KPMG税理士法人は「組織再編・M&A税務に強い」という評判を持っています。デロイト トーマツやPwCと比べて表に出る情報が少ないため、「実際のところどうなの?」と気になっている方は多いのではないでしょうか。
筆者は準大手税理士法人で税務DDに関わり、その後コンサルティングファームでM&Aのディール全体に携わってきました。その過程でKPMG出身者と何度も仕事をしてきた経験から、KPMG税理士法人の実態をお伝えします。
KPMG税理士法人の概要
KPMG税理士法人は、KPMGジャパンの税務サービスを担う法人です。グローバルではKPMG Internationalのメンバーファームとして世界各国にネットワークを展開しています。
日本法人の従業員数は約700名前後。Big4の中ではデロイト トーマツ、PwCに次ぐ規模ですが、特定の領域に強い専門集団というイメージが業界内では強いです。
KPMGの最大の強み:組織再編税務
KPMGを語る上で外せないのが組織再編税務の強さです。合併、会社分割、株式交換、スクイーズアウトなど、複雑なストラクチャーを税務面から設計する能力において、KPMG税理士法人は業界内で非常に高い評価を受けています。
筆者が税理士法人時代に税務DDをやっていた頃、対象会社の過去の組織再編スキームがKPMGによるものだったケースが何度かありました。スキームの組み方が緻密で、「ここまで丁寧に税務リスクを潰しているのか」と感心した記憶があります。
KPMG税理士法人の年収水準
KPMG税理士法人の年収は、Big4の中では標準的な水準です。各ポジションの目安は以下の通りです。
ポジション | 年次目安 | 年収レンジ |
|---|---|---|
スタッフ | 1〜3年目 | 500〜650万円 |
シニア | 4〜6年目 | 650〜850万円 |
マネージャー | 7〜10年目 | 900〜1,100万円 |
シニアマネージャー | 11年目〜 | 1,100〜1,400万円 |
ディレクター/パートナー | 実力次第 | 1,500万円〜 |
注目すべきは、M&A税務チームや組織再編チームに配属された場合、昇進スピードがやや速い傾向があるということです。専門性の高い領域は人材が限られるため、結果を出せば早期にマネージャーに上がれるケースがあります。
Big4間での年収比較
正直なところ、Big4の年収差は微差です。スタッフ〜シニアレベルでは年間で数十万円の違いしかなく、「年収だけで入る法人を決めるのはナンセンス」というのが業界の共通認識です。
むしろ重要なのは、どのチームに配属されてどんなスキルが身につくか。M&A税務や組織再編の経験があれば、転職時に年収を大きく上げることが可能です。筆者自身、税務DDの経験がコンサルへの転職時に大きな武器になりました。
KPMGの働き方と社風
少数精鋭の文化
KPMGの社風として挙げられるのが、少数精鋭で回す文化です。デロイト トーマツやPwCと比べて人数が少ない分、一人あたりの守備範囲が広くなります。これをポジティブに捉えれば「幅広い経験が積める」、ネガティブに捉えれば「一人あたりの負荷が大きい」ということになります。
KPMGの出身者からは「大変だったけど、その分成長スピードは速かった」という声を多く聞きます。特に入社3年目くらいまでの成長カーブが急で、「他のBig4の5年目と同じレベルの仕事を3年目で任される」という話も珍しくありません。
繁忙期の実態
繁忙期の忙しさは他のBig4と大きく変わりません。3月決算法人の申告がピークとなる4〜5月が最も忙しく、M&A案件が動くタイミングでは不規則な忙しさが発生します。
筆者自身、税理士法人時代に上場企業のクライアントで金曜の夜11時に連絡が来て、月曜の朝までに回答を求められた経験があります。M&Aが絡む案件はこういったタイムプレッシャーが避けられません。KPMG出身者に聞いても「大型のディールが走ると平日の終電は当たり前だった」という話はよく出てきます。
ただし、これは「常にそうだ」ということではなく、あくまでディールが走っている期間の話です。閑散期は定時退社も可能で、有給の取得率も比較的高いと聞いています。
教育制度と研修
KPMGはグローバルで統一された研修プログラムを持っており、技術面の教育は手厚い部類に入ります。特に組織再編やM&Aに関するナレッジの蓄積量は業界随一で、過去の案件で蓄積されたケーススタディを体系的に学べる環境があります。
また、海外のKPMGオフィスへの短期出向プログラムもあり、グローバルな視点を養う機会も提供されています。
M&A税務チームの仕事内容
KPMG税理士法人のM&A税務チームでは、具体的にどのような仕事をしているのか。筆者がコンサル側で見てきた範囲も含めてお伝えします。
主な業務内容
- 税務デューデリジェンス(税務DD):M&Aの買い手側として、対象会社の税務リスクを洗い出す
- ストラクチャリング:合併・分割・株式交換などの最適なスキームを設計する
- 税務意見書の作成:組織再編の税務上の取り扱いについて、法的根拠に基づいた意見を出す
- PMI(Post Merger Integration)支援:M&A完了後の税務面での統合をサポート
筆者がコンサルに移ってから感じたのは、税務DDの経験がディール全体を理解する上で非常に役立ったということです。「このストラクチャーだと繰越欠損金が使えなくなる」「適格合併の要件を満たすにはこの条件が必要」といった知識は、ディールの意思決定に直結します。
KPMG出身者のキャリアパス
KPMG税理士法人を退職した後のキャリアパスとして、代表的なものを紹介します。
転職先 | 割合の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
他のBig4法人 | 約20% | 専門領域を変えたい場合に多い |
コンサルティングファーム | 約25% | M&A全般に関わりたい人向け |
事業会社(税務・経理) | 約30% | ワークライフバランスを重視する場合 |
独立開業 | 約15% | 顧問先の基盤を築いてから |
その他(ベンチャーCFO等) | 約10% | 近年増加傾向 |
筆者のコンサル時代の同僚にもKPMG出身者が複数いましたが、共通して感じたのは「税務の基礎体力が高い」ということです。条文をきちんと読み込んで論理的に思考する習慣が染み付いており、コンサルでの仕事の質が高かった印象があります。
KPMGに向いている人・向いていない人
向いている人
- 組織再編やM&A税務に興味がある人:KPMGの最大の強みを活かせる
- 論理的思考が好きな人:条文解釈やスキーム設計には論理力が必要
- 少数精鋭の環境で成長したい人:手厚い放任主義(笑)で鍛えられる
- 将来M&A関連のキャリアを歩みたい人:税務DDの経験は転職市場で高く評価される
向いていない人
- ルーティンワーク中心の仕事がしたい人:案件ベースで変動が大きい
- 大人数のチームで働きたい人:少人数チームが基本
- 安定した業務量を求める人:ディールの波に左右される
まとめ:M&A税務を極めるならKPMGは有力な選択肢
KPMG税理士法人は、組織再編・M&A税務の分野でBig4の中でも特に強い存在感を持っています。年収水準は他のBig4と同等ですが、少数精鋭の環境で密度の濃い経験が積めるのは大きな魅力です。
M&A税務のスキルは転職市場でも非常に高く評価されるため、将来のキャリアの選択肢を広げたい人にとっては、KPMG税理士法人での経験は確実な投資になるはずです。税理士としてどの分野で勝負していくか、しっかり考えた上で検討してみてください。
