税理士として独立開業する——それは多くの税理士が一度は夢見るキャリアの到達点です。しかし、「独立したい」という気持ちと「独立して成功する」ことの間には、周到な準備が必要です。
この記事では、税理士としての独立開業を検討している方に向けて、具体的な準備手順、必要な手続き、リアルな年収事情をステップバイステップで解説します。独立と勤務の比較については独立vs勤務の徹底比較もあわせてご覧ください。
独立開業の全体スケジュール
独立までの理想的なスケジュール感を示します。最低でも6ヶ月、理想は1年前から準備を始めてください。
時期 | やるべきこと |
|---|---|
12〜9ヶ月前 | 独立の意思決定、資金計画の策定、専門分野の方向性を決める |
9〜6ヶ月前 | 開業場所の選定、Webサイトの準備、見込み顧客リストの作成 |
6〜3ヶ月前 | 退職の準備、税理士会への登録申請(変更届)、開業届の準備 |
3〜1ヶ月前 | 退職、事務所の契約、機材・ソフトの導入、名刺・挨拶状の作成 |
開業月 | 各種届出(開業届、青色申告等)、挨拶回り、営業活動の開始 |
独立に必要な初期費用
「独立にいくらかかるのか」は最も気になるポイントでしょう。以下は自宅開業とオフィス開業の2パターンの目安です。
費目 | 自宅開業 | オフィス開業 |
|---|---|---|
事務所の敷金・礼金 | 0円 | 50万〜100万円 |
内装・家具 | 5万〜10万円 | 20万〜50万円 |
PC・プリンター | 15万〜25万円 | 15万〜25万円 |
会計ソフト・税務ソフト | 年10万〜30万円 | 年10万〜30万円 |
税理士会入会金・登録料 | 約15万〜25万円 | 約15万〜25万円 |
Webサイト制作 | 10万〜30万円 | 10万〜30万円 |
名刺・封筒・挨拶状 | 3万〜5万円 | 3万〜5万円 |
運転資金(6ヶ月分) | 100万〜200万円 | 200万〜400万円 |
合計 | 約150万〜300万円 | 約320万〜650万円 |
私の推奨は、まず自宅開業でスタートし、顧問先が10件を超えたらオフィスを構えるという段階的なアプローチです。初期費用を抑えることで、失敗した場合のリスクも軽減できます。
独立に必要な手続き一覧
税理士会関連
- 税理士登録の変更届:勤務税理士から開業税理士への変更。所属する税理士会の支部に届出
- 税理士事務所の設置届:事務所の名称・所在地を届出。自宅でも「税理士事務所」としての届出が必要
税務署関連
- 個人事業の開業届:開業から1ヶ月以内に所轄税務署に提出
- 青色申告承認申請書:開業から2ヶ月以内に提出。65万円の特別控除を受けるために必須
- 消費税の届出:インボイス登録を行う場合は適格請求書発行事業者の登録申請が必要
その他
- 国民健康保険・国民年金への切替:退職後14日以内に市区町村で手続き
- 税理士職業賠償責任保険の加入:年間保険料は5万〜15万円程度。加入は必須と考えるべき
- 事業用の銀行口座開設:個人口座と分けることで経理処理がスムーズに
独立後のリアルな年収推移
独立後の年収は、顧客獲得の速度によって大きく変わります。以下は典型的なパターンです。
年数 | 顧問先数 | 売上(年間) | 手取り年収 |
|---|---|---|---|
1年目 | 5〜10件 | 200万〜400万円 | 100万〜250万円 |
2年目 | 10〜20件 | 400万〜700万円 | 250万〜450万円 |
3年目 | 20〜30件 | 600万〜1,000万円 | 400万〜700万円 |
5年目 | 30〜50件 | 1,000万〜1,800万円 | 700万〜1,200万円 |
注意してほしいのは、「売上」と「手取り年収」はまったく違うということ。売上から事務所経費、社会保険料、税金を差し引いた手取りは、売上の50〜70%程度です。1年目は貯金を取り崩す覚悟が必要です。
顧客獲得の5つの方法
独立で最も重要かつ難しいのが顧客獲得です。以下の5つの方法を組み合わせることをおすすめします。
1. 前職からの紹介・引き継ぎ
円満退社を前提に、前職の事務所から一部の顧問先を引き継がせてもらえるケースがあります。これが最もスムーズなスタートですが、退職時の契約(競業避止義務など)には十分注意してください。
2. Webマーケティング
自社Webサイト+SEO対策は、今の時代の独立税理士にとって必須です。「地域名+税理士」「相続税+税理士+地域名」などのキーワードで上位表示を狙います。開業3ヶ月前にはWebサイトを公開しておくのが理想です。
3. 紹介営業(金融機関・士業ネットワーク)
地元の銀行・信用金庫、弁護士、司法書士、社会保険労務士との関係構築は、安定的な紹介案件につながります。開業挨拶を兼ねて積極的に訪問しましょう。
4. セミナー・勉強会の開催
確定申告時期の無料セミナーや、経営者向けの税務勉強会を開催して見込み客を集めます。「まず知ってもらう→信頼される→顧問契約」という流れを作る有効な手段です。
5. 税理士紹介サービスの活用
税理士ドットコムなどの紹介サービスに登録する方法です。紹介手数料がかかりますが、開業初期の顧客獲得の起爆剤として活用できます。
独立に必要なツール・ソフト
- 会計ソフト:弥生会計、freee、マネーフォワード。顧問先の規模に合わせて複数対応できるとベスト
- 税務ソフト:達人シリーズ、JDL、ミロク。法人税・所得税・消費税・相続税の申告に対応
- 電子申告:e-Tax、eLTAX対応は必須
- グループウェア:Google Workspace、Microsoft 365。顧問先との資料共有に
- 請求書・契約管理:freee請求書、マネーフォワードクラウド請求書など
独立の最適タイミング
独立するなら「繁忙期の終わった4〜5月」がベストです。理由は以下のとおりです。
- 前職の繁忙期(1〜3月)を全うしてから円満退社できる
- 独立後の閑散期(6〜9月)を営業活動に充てられる
- 年末調整や確定申告の時期までに顧問先を確保する猶予がある
まとめ
税理士の独立開業は、十分な準備と計画があれば成功できるキャリアパスです。初期費用150万〜650万円、1年目は年収100万〜250万円というリアルな数字を受け入れた上で、それでも独立したいと思えるかどうかが判断のポイントです。
独立前に転職で経験の幅を広げたい方は、まず転職エージェントに相談してみてください。「独立に必要な経験が積める事務所」を紹介してもらうことも可能です。おすすめのエージェントは税理士向け転職エージェントランキングで比較しています。
