税理士の年収を上げる最も確実な方法は「転職」です。同じ事務所で年5〜10万円の昇給を待つよりも、転職で100万円以上のアップを狙う方が現実的だということは、業界にいる人なら誰もが感じていることでしょう。
筆者は政府系金融機関(年収350万円)→準大手税理士法人(500万円)→大手コンサル(700万円)→上場企業(800万円)と3回の転職で年収を倍以上に引き上げました。この記事では、その過程で学んだ年収を上げるための具体的なテクニックを5つに絞ってお伝えします。
テクニック1:転職のタイミングを「科目合格直後」に合わせる
年収交渉において最も強い武器は「科目合格」です。とくに、合格発表直後の12〜2月は転職市場が活発になるため、ここにタイミングを合わせるのが鉄則です。
筆者の場合、2科目合格の段階で転職した際に年収が100万円以上アップしました。科目合格は「この人は努力できる人だ」「あと何科目で官報合格だ」という期待値を買ってもらえるため、市場価値が確実に上がります。
科目合格数 | 転職時の年収上昇幅(目安) | 備考 |
|---|---|---|
1科目 | +30〜50万円 | 未経験→実務入りのタイミング |
2科目 | +50〜120万円 | 筆者はここで100万超UP |
3科目 | +80〜150万円 | 準大手以上が積極採用 |
4科目 | +100〜200万円 | 官報合格目前で高評価 |
5科目(官報) | +150〜250万円 | 有資格者として最大の市場価値 |
逆に言えば、科目合格のタイミングを逃すと、次の合格発表まで最大1年待つことになります。転職を考えているなら、合格発表から3ヶ月以内に動くのがベストです。
テクニック2:「比較対象」を作って交渉力を上げる
年収交渉の基本は「複数の内定を持つ」ことです。1社しか内定がない状態では交渉力がほぼゼロですが、2〜3社の内定があれば「A社ではこのくらいの提示をいただいている」と伝えるだけで交渉が動きます。
効果的な比較対象の作り方
- 同規模の事務所を2〜3社同時に受ける
- 異なる業態(税理士法人・コンサル・事業会社)を混ぜる
- 転職エージェントを複数使い、それぞれから求人を出してもらう
筆者が準大手からコンサルへ転職した際も、別のコンサルファームと並行して選考を進めていました。結果として、第一志望のファームが提示額を上乗せしてくれた経緯があります。
テクニック3:会計業界特化のエージェントを必ず使う
転職エージェント選びは年収交渉の成否を左右します。総合型の大手エージェントでは「税理士の科目合格」の市場価値を正しく評価できないケースが少なくありません。
エージェントタイプ | メリット | デメリット | 年収交渉力 |
|---|---|---|---|
会計業界特化型 | 業界相場を熟知、適正評価 | 求人数がやや限定的 | 高い |
総合型大手 | 求人数が豊富 | 科目合格の価値を理解しにくい | 中程度 |
スカウト型 | 自分の市場価値が分かる | 受動的になりがち | 案件次第 |
筆者のおすすめは、会計業界特化型を軸にしつつ、総合型にも1社登録して求人の幅を広げるという使い方です。特化型のエージェントは「この規模の事務所なら年収●●万円が相場」という情報を持っているので、交渉材料として非常に頼りになります。
テクニック4:「年収以外の条件」をカードとして使う
年収交渉というと「もっと上げてください」と直接言うイメージがあるかもしれませんが、実はそれは交渉下手のやり方です。上手な交渉は、年収以外の条件を調整することで、実質的な手取りを最大化します。
交渉に使える条件
交渉カード | 実質的な価値 | 交渉しやすさ |
|---|---|---|
入社時の等級・グレード | 年収50〜150万円相当 | 交渉しやすい |
残業代の扱い(みなし→実費) | 年収30〜100万円相当 | やや難しい |
リモートワーク日数 | 通勤費・時間の節約 | 交渉しやすい |
資格取得支援・研修費用 | 年20〜50万円相当 | 交渉しやすい |
賞与の支給月数 | 年収50〜200万円相当 | やや難しい |
たとえば「年収は御社の提示でお受けしますが、入社時の等級をひとつ上にしていただけませんか」という交渉は通りやすい。等級が上がれば、その後の昇給ベースも上がるため、長期的に見た年収への影響は大きいです。
テクニック5:「上場企業の税務ポジション」を選択肢に入れる
意外と見落とされがちですが、上場企業の税務ポジションは税理士にとって非常にコスパが良い選択肢です。
筆者がコンサルから上場企業に移った際、年収交渉はほとんどしていません。上場企業は税理士資格を持つ人材をそこまで安く採ろうとしてこないのが実態です。給与テーブルがしっかりしている分、資格と経験を正当に反映した提示が出てきます。
比較項目 | 税理士法人 | 上場企業 |
|---|---|---|
年収レンジ | 500〜1,200万円 | 600〜900万円 |
残業時間 | 繁忙期40〜80h/月 | 20〜40h/月 |
時給換算 | 2,500〜4,000円 | 3,500〜5,000円 |
福利厚生 | 事務所による | 充実していることが多い |
年収交渉の難易度 | 高い | テーブル準拠で比較的容易 |
額面の年収だけを見ると税理士法人の方が高いケースもありますが、残業時間を加味した時給換算では上場企業の方が上回ることが多い。WLBと年収の両立を求めるなら、事業会社は積極的に検討すべきです。
年収交渉でやってはいけないこと
現年収を正直に伝えすぎる
現年収が低い場合、そのまま伝えると「前職+αで十分でしょう」という提示になりがちです。エージェント経由であれば、現年収ではなく「希望年収」を軸に交渉を進めてもらうことが可能です。
内定後に初めて年収の話をする
年収の希望は選考の初期段階で伝えておくべきです。最終面接後に「やっぱりもう少し上がりませんか」では、印象が悪くなるだけです。
「相場」を知らずに交渉する
業界の年収相場を知らなければ、高すぎる要求で引かれるか、低すぎる妥協をするかの二択になります。エージェントの情報や転職サイトの年収データを事前に確認しておきましょう。
まとめ:年収は「動く人」が上げていく
筆者は3回の転職で年収を350万円から800万円まで上げましたが、振り返ると毎回意識していたのは「タイミング」「比較対象」「交渉材料」の3つです。税理士資格は転職市場で強力な武器になりますが、武器は使わなければ意味がありません。
現在の年収に不満があるなら、まずは会計業界特化のエージェントに登録して自分の市場価値を確認するところから始めてみてください。動かなければ何も変わらない——これは筆者が身をもって実感していることです。
